炭酸飲料用ガラスびんの耐内圧力強度試験と破壊オリジン |
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平成13年10月30日清涼飲料研究会に発表しました。
財団法人日本炭酸飲料検査協会
Japan Carbonated Beverage Inspection Association
炭酸飲料用ガラスびんの耐内圧力強度試験と破壊オリジン
SUMMARY
1. 目的
1971年前後、炭酸飲料の瓶詰製品の破裂事故が続発し社会問題にまで発展した。1971年の警視庁調査では発生件数311件、被害状況213件うち眼球障害2件、縫合手術43件となっている。そして、これらの破瓶事故に限らず様々な製品の事故に対応する、製品安全のための一般法として消費生活用製品安全法が1973年6月に制定された。その後、炭酸飲料びんの強化、びん型の改良、製造技術の進歩、検査体制の拡充等による製品の安全性の向上に伴い、消費生活用製品安全法に基づく特定製品に指定されていた炭酸飲料用びん詰製品は1995年に指定解除された。しかし、その安全性の水準を引き続き維持することは重要である。また、従来の特定製品に指定されていなかった容量400ml未満の炭酸飲料用ガラスびんについても、その安全性を確認しておくことが必要である。そこで、炭酸飲料用ガラスびんの安全性を把握するためのデータとして、びんの耐内圧力強度の測定と、そのオリジンをしらべた。
2. 試料および試験方法
平成11,12年度にわたり全国のJAS認定工場から委託されたJAS格付検査の試料を用いて試験を行った。
2-1 びんの種類
リターナブルびん1111本、ワンウェイびん890本の総計2001本を試験に供した。
2-2 炭酸飲料の種類
炭酸水403本、フレーバー系飲料1135本、透明飲料302本、コーラ飲料161本であった。
2-3 耐内圧力強度試験
AMERICAN GLASS RESEARCH,INCのIncrement Pressure Tester(図1)を使いJIS S 2302炭酸飲料用ガラスびんの耐内圧力試験方法3.1通過試験方法にしたがって行った。破壊圧力は、最大40kg/cm2 までとした。(現在、計量法上では圧力単位はkPaとなっているが、試験をkg/cm2 でおこなったので、圧力単位はkg/cm2 とした。)
(測定方法)
2-4 重量
JIS S 2351炭酸飲料用ガラスびん( 5.1 ) (2) 重さの試験方法で行った。
(測定方法)
2-5 総容積
炭酸飲料JAS規格による内容量の検査方法に準じて測定した。
(測定方法)
2-6 オリジン(破壊起点)の解明
Journal of The America Ceramic Societyに掲載されているBreakage Studies of Glass Bottles Under Internal Hydrostatic Pressureを参照した。
(方法)
3. 結果および考察
試験対象としたびん2001本中1190本の59%が、40kg/cm2 以上の耐内圧力強度をもっていた(図2-1)。リターナブルびん、ワンウェイびんに分けてみるとリターナブルびんが1111本中545本の49%(図2-2)、ワンウェイびんが890本中645本の72%が40kg/cm2 以上の耐内圧力強度をもっていた(図2-3)。なお、未使用びんについて内容物の圧力によって異なるが、リターナブルびんは9.5〜15.0kg/cm2 以上というJIS規格があり、ワンウェイびんは8.5〜13.5kg/cm2 以上という日本ガラスびん協会の自主規格がある(表1)。今回、試験したすべてのびんがそれぞれの規格において十分な耐内圧力強度をもっており、その安全性が確認できた。
容量別に破壊圧力を比較すると、120〜290mlのびんについては、破壊圧力の上昇に比例して破壊したびんの本数が増加した(図3-1.2)。 300ml以上のびんについては(図3-3)に示したように28〜30kg/cm2 での破壊が一番多く、容量の少ないびんに比べて破壊され易かった。
炭酸飲料の種類別では、(図4)に示すように炭酸水およびコーラ飲料用びんの耐内圧力強度が高かった。これはコーラ飲料用びんの容量が120〜200mlに偏っているためと思われる。また、容量別にみたときに300ml以上の割合が一番多い透明飲料は、他の種類のものに比べて破壊圧力が低いものが多くなっている。
破壊オリジンについては、全体的には接触する頻度が最も高い底の部分に多いことがわかった。しかし、リターナブルびんは胴の部分にも目立っていた。これはスカッフィング部分からの破壊オリジンがあったためであった。(図5-1.2)。
W/C (weight/content)については、リターナブルびんのみ検討した。W/C からみた圧力別の破壊割合は0.9以上1.2未満では全びんが破壊し、破壊圧力は(図6-1)に示すとおりであった。1.2以上1.6未満では(図6-2)に示すように42%が40kg/cm2 以上の耐内圧力をもっていた。また、1.6以上1.9未満では(図6-3)に示すように74%が40kg/cm2 以上の耐内圧力をもっていた。残りの26%も20kg/cm2 以上の耐内圧力をもっていた。W/Cの値が高くなると、びんの肉厚も総体的に厚くなり当然のことながら耐内圧力強度が高いびんの割合が多くなった。ワンウェイびんについてはW/Cと破壊圧力との関連は、認められなかった。
1971年当時は、ガラスびんのコスト低減をはかるため、びんの重量を安易に減らしたことと、それに対応する製造技術からびんの肉厚が薄くなり均一性にも問題が残ったため、びんの耐内圧力強度の低下を招き破裂事故が続発した。
夏の炎天下での車内に放置された飲料の液温は90℃近くにまで上昇する。この場合、ガス内圧力3.7kg/cm2 の製品は14kg/cm2 程度にまで上昇する可能性がある。今回の試験でサンプルとして使用したびんは、すべて14kg/cm2 以上の耐内圧力をもっていたので安全性は一応確保されているといえる。もちろん、びんのビリ、当たり傷、偏肉、石、泡、深いスカッフィング等があればこの限りではない。
清涼飲料の容器としてガラスびんは種々の中身品質に対する影響、商品価値、リサイクルにも優れ、やはりA級の価値があるといえる。そして、将来また脚光をあびる可能性を秘めている。
製造技術の向上に伴い、ガラスびんの安全性は高まっている。しかしガラスびんに対する基本技術をしっかりもっている必要があり、耐内圧力強度の管理も基本技術の一つとして確立されていなければならない。ガラスびんの特徴および現状をよく把握しておくことは将来の飲料業界の発展およびHACCP管理に欠くことのできない事項であることを強く認識していただきたいと思っている。
<文献>
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