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JAS法の改正に併せて、炭酸飲料・果実飲料・豆乳類についての、製造業者の認定のための技術的基準の内容が変更となりました。現在、その内容にあわせて各JAS認定工場が日常の品質管理業務を行っていくことが、求められています。 JASの主な改正点は「自己格付制度」の導入ですが、それよりも注目すべきことは、認定の技術的基準にシステム管理の内容が盛り込まれていることです。このシステム管理の考え方は、ISOに沿ったものとも言えます。しかし、すべての認定工場がISO9001の認証を取得しているわけではなく、各工場の品質管理業務の実施状況において、かなりのばらつきが目立ってきました。 特に、システム管理で重要である内部監査については、「やり方がわからない」「人が足りない」というお言葉を耳にします。 このようなことを受けて、「内部監査」について少しご説明をさせていただきたいと思います。少し私見が入りますが、参考にしていただければ幸いです。 なお参考文献として、@ISO19011 品質及び/又は環境マネジメントシステム監査のための指針、AISO9000 品質マネジメントシステム 基本及び用語、BISO9001 品質マネジメントシステム 要求事項、を使用しています。
1.監査とは まず、監査という言葉から考えてみましょう。ISO9000のなかでは「監査」について次のように定義されています。 『監査基準が満たされている程度を判定するために、監査証拠を収集し、それを客観的に評価するための体系的で、独立し、文書化されたプロセス』これではわかりにくいので、もう少し用語の説明をします。(ISO9000より) 監査基準:対照のための資料として用いる一連の方針、手順又は要求事項。 監査証拠:監査基準に関連し、かつ、検証できる、記録、事実の記述又はその他の情報。 そのような点からみると、監査基準は「認定のための技術的基準」、監査証拠は「日常の記録」と考えられます。 監査証拠の収集については、記録を確認したり、実際に作業に携わっている人に聞いたりすることとしてみると、わかりやすくなります。 認定工場で行う監査とは、 『認定のための技術的基準が満たされている程度を判定するために、日常業務の記録を確認したり、作業に携わっている人に聞いたりしながら、実施している内容を客観的に評価するための体系的で、独立し、文書化されたプロセス』となります。2.監査の種類
監査が少しわかったところで、監査の種類を説明します。監査は3つに大別することができます。これは、監査を実施する人(監査員)と監査を受ける人(被監査者)の関係で呼び方が変わります。(参考 ISO19011 3.1 備考1.及び2.)
@ 第一者監査監査は、被監査者と監査員との関係で呼び方が変わることは先に述べましたが、工場で担当者から「内部監査の実施方法がわからない」と質問を受けたときには、こうお答えすることにしています。「今、私はここで品質管理の記録やメーカーからの成績書などを確認させていただいていますが、内部監査ではこの作業を内部的に他の部署の方(例えば総務、経理)に同じことをやってもらってください。そこから始めて下さい。」 この説明で大体の方は納得していただけています。 補足 用語の定義(ISO19011より) 監査依頼者:監査を要請する組織又は人。 被監査者:監査される組織。 監査員:監査を行う力量を持った人。3.なぜ監査を行うのか
なぜ、監査を行うのかを考えてみましょう。 さらに、『監査は経営方針及び管理業務を支援する効果、かつ、信頼のおけるツールとなり、また、組織がそのパフォーマンスを改善するには何に取り組むべきかについての情報を提供するものとなる。』(ISO19011「4.監査の原則」より)ことが重要です。4.内部監査の目的 内部監査は、ISO9001(8.2.2)のなかでは次のように要求されています。 『組織は、品質マネジメントシステムの主要な事項が満たされているか否かを明確にするために、あらかじめ定められた間隔で内部監査を実施すること。』さらに詳しく言えば、内部監査には2つの評価をすることが求められています。一つは適合性であり、もう一つは実施についてです。 では、何について適合しているのかですが、次のことを言っています。 ・製品の実現の計画ここで難しいのは効果的に実施され、維持されていることを確認することです。まず、初めて内部監査を行う場合は、「適合性」に重点を置いて行う方が良いでしょう。あくまでも基本は、組織自らが作った規程に基づいて、日常の品質管理活動が実施されていることです。そして何回も内部監査を実施し、日常の品質管理活動の実施において不適合が無くなってきたときに、より効果的な実施方法を目指すという視点から内部監査を実施していくと良いでしょう。適合性ばかりでなく、コストや歩合、もっと良い実施方法、分析方法がないかということに移っていくことが必要かと思います。 さらに注意しなければならないのは、監査の目的は「不適合を見つける」ことではないということです。自らの品質管理活動をより良いものに変えていくためのものであることを理解しなければなりません。そのための手段として「不適合を見つける」のです。
<内部監査の準備>
前記で内部監査について説明してまいりましたが、ここから実施に向けた準備についての説明をさせていだきます。(参考ISO19011「6.監査活動」)
1.内部監査規程と手順
内部監査を実施する前に、内部監査について規程を作成します。これは認定の技術的基準のなかに「品質管理の実施状況についての内部監査に関する事項」とありますので、この内容に当てはまるように作成します。
2.監査員について
内部監査を実施する場合、監査員は基本的に自分の仕事は監査をすることはできません。品質管理担当者が内部監査を実施する場合、この品質管理担当者の仕事は別の人が監査をしなければなりません。これがおそらく 「人が足りない」という言葉に関連してくるのかと推測できます。
3.チェックリストの作成
内部監査で必要事項をすべて監査するには、チェックリストはとても重要なものです。どのように作成するのかを考えてみます。 1)スタート時に巻締め状態を、ヘッド数分抜き取り確認しているか?もちろん、巻締め状態の確認をしているか?として、さらに細かく確認項目を作成しても構いません。 チェック・リストは、「約束ごと」に沿ってきちんと品質管理活動が実施されているのか否かを、知る手だてとして作成するのです。 さらに、細かく計器などについて数値が管理基準として設けられ、記録に残すことになっていた場合も、その計器についてきちんと管理が行われているのか否かを、確認することも大事です。 まず、チェックリストの作成にあたって、各工場での内部規程で規定している管理項目を拾い上げ、それからチェックリストの作成に入るようにした方が良いでしょう。 拾い上げた管理項目すべてを、内部監査で確認する必要はありません。そのなかから抜き打ちで実施しても構いません。ただし、少なくとも認定の技術的基準で内部規程を策定するように求められている項目については、なるべく行うようにしてください。
4.チェックリストの盲点
内部監査を実施するにあたって、チェックリストが有効だとしましたが、実はチェックリストには盲点があります。
5.内部監査の実施の準備
内部監査用のチェックリストを作成し、人選をすませたら、いよいよ監査の実施です。が、いきなり「明日行います」というわけにはいきません。監査は、監査者と被監査者で行いますから、あらかじめいつ頃実施するか決めておきます(監査スケジュール)。すべての項目に対して1回で行うことが時間的に無理な場合は、2回にわけて行うこともできますので、無理のないように設定します。 補足 内部監査は監査チームが行います。監査チーム(ISO19011 3.9)とは、監査を行う1人以上の監査員のことです。1人で行うのが難しいときは、製造又は品質管理業務に詳しい人の協力をお願いすることもできます。この協力者は技術専門家(ISO19011 3.10)と呼ばれ、監査チームの監査員としての活動はできません。<監査の実施手順>
内部監査員の人選、チェックリスト作成が終わり、監査計画書を作成し被監査部門に渡します。これで準備は整いました。それでは、内部監査を始めます。(参考ISO19011 6.5「現地監査活動の実施」)
1.初回会議
監査を始める前に、出席者の確認をとります。事前に監査計画書を渡してありますので、被監査部門からも可能な限り責任者が出席します。
2.監査の実施
2名以上で監査を行う場合、役割を決めておくと良いでしょう。質問する人とその記録を取る人というようにします。あらかじめ設定した時間割に沿って進めなければなりませんので、効率良く行います。 1)文書の確認を行います。 被監査部門で使用している規程、手順書を見せてもらいます。監査にあたっては、お互いに冷静に行わないと公正な監査ができません。これは、監査員と被監査部門の協力がなければできませんので、礼儀正しく行うようにします。 監査員は、被監査部門の人に対しての質問は、はっきりとわかりやすく伝える努力をしなければなりません。立て続けに質問をするようなことは避け、一つずつ聞いて行くことを心がけ、思いこみをしてはいけません。 さらに、基本は「客観的に評価する」ことですから、私情を持ち込んではいけません。 被監査部門の人も、曖昧な態度は良くありません。聞かれたことには正直に答えるようにします。自分では気がつかないことを評価してもらうのですから、そこに嘘があるのはよくありません。
3.監査結果の分類
監査が所定のとおりに終了したあとに、監査結果の確認を行います。これは俗にチーム会議と呼ばれています。ここには、被監査部門の人は出席できません。内部監査員のみで行います。 1)場所:不適合が見つかった個所のことです。4.最終会議
この会議では、監査員が被監査部門に監査結果を伝えます。 1)もう一度監査の範囲、目的、基準について確認します。これで内部監査は終了となります。不適合が見つかった場合は、必ず是正処置を行います。決められている内部監査を実施したからそれで終丁ではありません。 矛盾はしますが、不適合があった場合、是正処置が行われ、その内容が確認されてから、本当の意味での内部監査が終了するのです。
5.監査報告書
監査報告書は、主任監査員となった人が作成します。若しくは、その指示のもと他の監査員が作成しても構いません。 1)監査の目的・項目提出先は監査依頼者です。
<是正処置について>
内部監査で不適合とされたことについて、被監査部門は是正処置を行わなければなりません。そのままにしておくことはできません。 1)即時処置:不適合の状態を適合の状態にすることです。この中で注意をしなければならないのは、原因究明です。ここがしっかりとできなければ、その後に行われる対策が有効のものとならず、また次の内部監査で「不適合」となりかねません。 さらに、不適合の原因で「担当者が忙しかった」ということも、残念ながら認められません。不適合の原因は「実施されるべきことが実施されなかった」ことです。なぜ実施できなかったのかの答えが、「担当者が忙しかった」だとすると、不適合の根本的な原因が「担当者の仕事量または能力」になってしまって、不適合の状態から離れてしまいますし、「忙しい」のは「現象」です。 もう少し説明しますと、「忙しい」を原因にした場合、行われる是正処置は「担当者の仕事を減らす」となり、品質管理活動にこの先支障をきたすことになります。 余談になりましたが、以上のことから考えると不適合の原因究明をしっかりとやることが必要です。対策がとれるところまで原因特定を行えるようにしましょう。 被監査部門は、不適合とされたことについて是正処置を行いますが、不適合を指摘した監査員は、監査のあとに実施された是正処置について、確認をしなければなりません。この確認が終わらないと、内部監査のすべてが終わったとはいえません。被監査部門から、是正処置を行った旨の報告を受けたら、かならず確認をとります。 確認を取る方法はいろいろありますが、この場合は「有効性」を評価します。難しいことですが、基本的には「不適合が再発しない」ことにポイントをおくと良いでしょう。 最後に監査員は、実施された是正処置の確認をとったら、監査依頼者にその旨報告します。これで内部監査はすべて終了したことになります。
<システムの構築とは>
ここまで内部監査について、簡単ですが説明をさせていただきました。まだまだ、書き足りないところもあるかと思います。さらに言葉がわからない等の疑問も生じたかと思います。そのときは、是非本会までご質問をお寄せください。そのなかから、また、新たにこのような形での説明をさせていただく方向で、努力いたします。
執筆者:(財)財団法人日本炭酸飲料検査協会 主任検査員・JRCA ISO9001 審査員補 内木 美絵子 |