■JAS認定工場が行う内部監査についての考察

 JAS法の改正に併せて、炭酸飲料・果実飲料・豆乳類についての、製造業者の認定のための技術的基準の内容が変更となりました。現在、その内容にあわせて各JAS認定工場が日常の品質管理業務を行っていくことが、求められています。
 JASの主な改正点は「自己格付制度」の導入ですが、それよりも注目すべきことは、認定の技術的基準にシステム管理の内容が盛り込まれていることです。このシステム管理の考え方は、ISOに沿ったものとも言えます。しかし、すべての認定工場がISO9001の認証を取得しているわけではなく、各工場の品質管理業務の実施状況において、かなりのばらつきが目立ってきました。
 特に、システム管理で重要である内部監査については、「やり方がわからない」「人が足りない」というお言葉を耳にします。
 このようなことを受けて、「内部監査」について少しご説明をさせていただきたいと思います。少し私見が入りますが、参考にしていただければ幸いです。
 なお参考文献として、@ISO19011 品質及び/又は環境マネジメントシステム監査のための指針、AISO9000 品質マネジメントシステム 基本及び用語、BISO9001 品質マネジメントシステム 要求事項、を使用しています。

1.監査とは

 まず、監査という言葉から考えてみましょう。ISO9000のなかでは「監査」について次のように定義されています。

『監査基準が満たされている程度を判定するために、監査証拠を収集し、それを客観的に評価するための体系的で、独立し、文書化されたプロセス』
 これではわかりにくいので、もう少し用語の説明をします。(ISO9000より)
監査基準:対照のための資料として用いる一連の方針、手順又は要求事項。
監査証拠:監査基準に関連し、かつ、検証できる、記録、事実の記述又はその他の情報。
 そのような点からみると、監査基準は「認定のための技術的基準」、監査証拠は「日常の記録」と考えられます。
 監査証拠の収集については、記録を確認したり、実際に作業に携わっている人に聞いたりすることとしてみると、わかりやすくなります。

 認定工場で行う監査とは、

『認定のための技術的基準が満たされている程度を判定するために、日常業務の記録を確認したり、作業に携わっている人に聞いたりしながら、実施している内容を客観的に評価するための体系的で、独立し、文書化されたプロセス』となります。
2.監査の種類

 監査が少しわかったところで、監査の種類を説明します。監査は3つに大別することができます。これは、監査を実施する人(監査員)と監査を受ける人(被監査者)の関係で呼び方が変わります。(参考 ISO19011 3.1 備考1.及び2.)

@ 第一者監査
 組織が自ら、自分たちの品質マネジメントシステム(品質管理活動)の適合性若しくは有効性について評価するために行う監査のことをいいます。この場合原則として、監査員と被監査者は同じ組織(工場又は会社)の人となります。これは「内部監査」と呼ばれています。
A 第二者監査
 取引関係のある若しくはこれから取引を開始しようとするなどの顧客が組織(供給者等)に対して行う監査のことをいいます。ブランドオーナーが生産委託工場について行う場合などが想定され、監査員は取引先となり被監査者は自工場(自社)となります。
B 第三者監査
 組織から独立した第三者審査機関が組織に対して行う監査のことをいいます。本会が各工場にお伺いして実施する工場調査も、その一つと言えます。
 監査は、被監査者と監査員との関係で呼び方が変わることは先に述べましたが、工場で担当者から「内部監査の実施方法がわからない」と質問を受けたときには、こうお答えすることにしています。「今、私はここで品質管理の記録やメーカーからの成績書などを確認させていただいていますが、内部監査ではこの作業を内部的に他の部署の方(例えば総務、経理)に同じことをやってもらってください。そこから始めて下さい。」
 この説明で大体の方は納得していただけています。   
補足 用語の定義(ISO19011より)  監査依頼者:監査を要請する組織又は人。 被監査者:監査される組織。  監査員:監査を行う力量を持った人。
3.なぜ監査を行うのか

 なぜ、監査を行うのかを考えてみましょう。
 これはそれぞれの監査の種類によって異なりますが、基本になるのは「評価する」ということではないでしょうか。
 普段身なりを整えるには、鏡を利用しますね。今の工場設備では、入念に充てん室への入室前のチェックとして、鏡で身なりを確認する工場も増えてきています。しかし、日頃の品質管理活動すべてを鏡に写し、同時進行でチェックすることはできません。同時進行でチェックすることができないのならば、後日改めて自らの行動をチェックする(又はしてもらう)ことで確認することしかできません。
 さらに、何の調べもしないまま、どんな工場なのか、製品の品質レベルが不明のまま原材料の供給の契約を結ぶことも考えられません。やはり、手を差し出してきた相手をよく調べてからと思うのではないでしょうか。
 つまり監査とは、評価されることにより自らを知るきっかけとも言えます。良いところ悪いところも含めて、自らの活動を評価して貰うことにより自らが知ることができます。  

さらに、『監査は経営方針及び管理業務を支援する効果、かつ、信頼のおけるツールとなり、また、組織がそのパフォーマンスを改善するには何に取り組むべきかについての情報を提供するものとなる。』(ISO19011「4.監査の原則」より)ことが重要です。
4.内部監査の目的

 内部監査は、ISO9001(8.2.2)のなかでは次のように要求されています。

『組織は、品質マネジメントシステムの主要な事項が満たされているか否かを明確にするために、あらかじめ定められた間隔で内部監査を実施すること。』
 さらに詳しく言えば、内部監査には2つの評価をすることが求められています。一つは適合性であり、もう一つは実施についてです。
 では、何について適合しているのかですが、次のことを言っています。
 ・製品の実現の計画
 ・規格の要求事項
 ・組織が決めた品質マネジメントシステム要求事項
 そして、実施については次のことを言っています。
 ・品質マネジメントシステムが効果的に実施され、維持されていること
 ここで難しいのは効果的に実施され、維持されていることを確認することです。まず、初めて内部監査を行う場合は、「適合性」に重点を置いて行う方が良いでしょう。あくまでも基本は、組織自らが作った規程に基づいて、日常の品質管理活動が実施されていることです。そして何回も内部監査を実施し、日常の品質管理活動の実施において不適合が無くなってきたときに、より効果的な実施方法を目指すという視点から内部監査を実施していくと良いでしょう。適合性ばかりでなく、コストや歩合、もっと良い実施方法、分析方法がないかということに移っていくことが必要かと思います。
 さらに注意しなければならないのは、監査の目的は「不適合を見つける」ことではないということです。自らの品質管理活動をより良いものに変えていくためのものであることを理解しなければなりません。そのための手段として「不適合を見つける」のです。

<内部監査の準備>

 前記で内部監査について説明してまいりましたが、ここから実施に向けた準備についての説明をさせていだきます。(参考ISO19011「6.監査活動」)

1.内部監査規程と手順

 内部監査を実施する前に、内部監査について規程を作成します。これは認定の技術的基準のなかに「品質管理の実施状況についての内部監査に関する事項」とありますので、この内容に当てはまるように作成します。
 ここで作成する規程にこうしなければならないという決まりはありませんが、少なくても内部監査を実施するための手順は文書化しておきます。
 たとえば、監査の年間スケジュール、監査実施計画書、実施方接、是正処置の評価、監査報告書などが考えられます。

2.監査員について

 内部監査を実施する場合、監査員は基本的に自分の仕事は監査をすることはできません。品質管理担当者が内部監査を実施する場合、この品質管理担当者の仕事は別の人が監査をしなければなりません。これがおそらく 「人が足りない」という言葉に関連してくるのかと推測できます。
 ISOでは、内部監査を実施する人は内部監査員としての資格を持つことが必要です。そのためのコンサルタントを招いたり、外部の研修を受けたりしています。
 では、認定工場で実施することとされている内部監査はどうすれば良いのか、難しく考えてしまうところですが、実は非常に簡単にできる方法があります。
 そのための準備は必要ですが、この準備をきちんと行えば、監査員の教育は必要ありません。品質管理、製造に関係のない人でもできます。「人がいない」という問題は、まず無くなります。そのために準備するものは「チェックリスト」です。
 また監査員となった人は、これから監査を行おうとする部門が使用している文書についての確認作業を、事前に行っておくと良いでしょう。その他にも、前回行った内部監査についての結果等についても、再度確認を取っておくことも有効です。

3.チェックリストの作成

 内部監査で必要事項をすべて監査するには、チェックリストはとても重要なものです。どのように作成するのかを考えてみます。
 まず、炭酸飲料の製造業者における認定のための技術的基準の内容を見てみましょう。その中の「二 品質管理の実施方法 2」に定められている項目を確認します。(1)から(12)までありますが、すべての項目について内部規程を整備することが求められています。
 ここで「内部規程」についてですが、これは改めて説明することもないかと思いますが、簡単に確認しましょう。「規程」とは「約束ごと=ルール」のことです。具体的に例示を挙げてみます。
 炭酸飲料の場合、整備する内部規程の中に(4)巻締め、打栓又は密封に関する事項とあります。この項目では、何を管理しなければならないのかというと、巻締め等が完全に行われていることです。では、それをどのように確認するのでしょうか。今仮に、スタート時に巻締め機のヘッド数と同じ数だけ製品を抜き取り、巻締め状態の確認をし、その後製造中には所定時間ごとに確認をする、と実施方法を決めたとします。
 さて、この中での「約束ごと=ルール」はどれでしょうか。
 認定のための技術的基準で求められているのは、「巻締め、打栓又は密封に関する事項について規程を作成しなさい」ということです。要求されたことに対しての答えは「巻締め状態を確認します」。そして、その方法としてスタート時、その後は所定時間ことに確認しますと決めています。つまり、要求されたことに対して「この実施方法で確認します」と決めたことがいわば「約束ごと=ルール」になります。
 では、この(4)巻締め、打栓又は密封に関する事項についての内部監査を行うとき、どのようなことをチェックすれば良いのでしょうか。
 前文でも説明しましたとおり、内部監査でまず確認することは「適合性の評価」です。自らが決定した実施方法で行われているのかどうか、を確認します。よって、この巻締めに関する事項の内部監査としては、以下の項目が考えられます。

 1)スタート時に巻締め状態を、ヘッド数分抜き取り確認しているか?
 2)製造開始後、所定時間ごとに巻締め状態を確認しているか?
 もちろん、巻締め状態の確認をしているか?として、さらに細かく確認項目を作成しても構いません。
 チェック・リストは、「約束ごと」に沿ってきちんと品質管理活動が実施されているのか否かを、知る手だてとして作成するのです。
 さらに、細かく計器などについて数値が管理基準として設けられ、記録に残すことになっていた場合も、その計器についてきちんと管理が行われているのか否かを、確認することも大事です。
 まず、チェックリストの作成にあたって、各工場での内部規程で規定している管理項目を拾い上げ、それからチェックリストの作成に入るようにした方が良いでしょう。
 拾い上げた管理項目すべてを、内部監査で確認する必要はありません。そのなかから抜き打ちで実施しても構いません。ただし、少なくとも認定の技術的基準で内部規程を策定するように求められている項目については、なるべく行うようにしてください。

4.チェックリストの盲点

 内部監査を実施するにあたって、チェックリストが有効だとしましたが、実はチェックリストには盲点があります。
 チェックリストに沿って内部監査を行うことは、そのチェックリストに片寄った内容しかチェックできないという盲点があります。チェックリストで決められたことにこだわりすぎて、他のことに気がつかないことがあるのです。初めからチェックリストを利用しない内部監査は難しいものがあり、チェックリストに頼らざるを得ないところがありますが、内部監査を実施しながら疑問に思ったことは書きとめ、その疑問についても納得のできるまで確認をとるようにすると、より良い内部監査を行うことができます。
 さらに、チェックリストに洩れがあると、確認すべき項目が落ちてしまうこともあります。チェックリストの作成には時間をかけ、洩れがないように作成しなければなりません。
 監査依頼者(品質管理担当者等)は、あらかじめチェックリストを作成しておく方法も良いでしょう。

5.内部監査の実施の準備

 内部監査用のチェックリストを作成し、人選をすませたら、いよいよ監査の実施です。が、いきなり「明日行います」というわけにはいきません。監査は、監査者と被監査者で行いますから、あらかじめいつ頃実施するか決めておきます(監査スケジュール)。すべての項目に対して1回で行うことが時間的に無理な場合は、2回にわけて行うこともできますので、無理のないように設定します。
 人選を2名以上行った場合は、主任となるべき人を1名決定します。主任に任命された人は、この先監査を行おうとする部署(被監査部門)の担当者と監査計画書(監査の時間割)を作成し、被監査部門に渡します。
 この監査計画書には、次の項目をいれておきます。監査目的、監査基準、監査項目、監査日時、監査の時間割。監査をするにあたって、目的と基準はあらかじめ被監査部門に明示しておくと親切です。   

補足  内部監査は監査チームが行います。監査チーム(ISO19011 3.9)とは、監査を行う1人以上の監査員のことです。1人で行うのが難しいときは、製造又は品質管理業務に詳しい人の協力をお願いすることもできます。この協力者は技術専門家(ISO19011 3.10)と呼ばれ、監査チームの監査員としての活動はできません。
<監査の実施手順>

 内部監査員の人選、チェックリスト作成が終わり、監査計画書を作成し被監査部門に渡します。これで準備は整いました。それでは、内部監査を始めます。(参考ISO19011 6.5「現地監査活動の実施」)

1.初回会議

 監査を始める前に、出席者の確認をとります。事前に監査計画書を渡してありますので、被監査部門からも可能な限り責任者が出席します。
 次に監査員は、監査の目的・基準・項目の確認をとり、おおよその時間を時間割を使って説明し、確認をとります。
 この初回会議は、短時間で行います。

2.監査の実施

 2名以上で監査を行う場合、役割を決めておくと良いでしょう。質問する人とその記録を取る人というようにします。あらかじめ設定した時間割に沿って進めなければなりませんので、効率良く行います。
 ここでは基本的な実施方法を書きます。

1)文書の確認を行います。  被監査部門で使用している規程、手順書を見せてもらいます。
2)実際に製造の現場等で行われていることを確認します。
 これは、客観的証拠の収集にあたります。ポイントとして、規程、手順書どおりに行われているか否かを確認します。そのために必要な記録は見せてもらいます。
3)監査員が見た内容について質問等をして、確認をとります。
4)内部監査を行っている場所で確認を取るのが難しい場合は、確認がとれる場所に行きます。
5)監査員が、見たこと、聞いたことの結果を記録します。
 質問に答えた人、文書、記録の名称・日時・記入者、その他の情報を記録します。
 監査にあたっては、お互いに冷静に行わないと公正な監査ができません。これは、監査員と被監査部門の協力がなければできませんので、礼儀正しく行うようにします。
 監査員は、被監査部門の人に対しての質問は、はっきりとわかりやすく伝える努力をしなければなりません。立て続けに質問をするようなことは避け、一つずつ聞いて行くことを心がけ、思いこみをしてはいけません。
 さらに、基本は「客観的に評価する」ことですから、私情を持ち込んではいけません。
 被監査部門の人も、曖昧な態度は良くありません。聞かれたことには正直に答えるようにします。自分では気がつかないことを評価してもらうのですから、そこに嘘があるのはよくありません。

3.監査結果の分類

 監査が所定のとおりに終了したあとに、監査結果の確認を行います。これは俗にチーム会議と呼ばれています。ここには、被監査部門の人は出席できません。内部監査員のみで行います。
 内部監査を行って、規程どおりに行われていれば「適合」と判断しますが、規程どおりに行われていなかった場合「不適合」と判断します。さらに、その不適合が「重大」か「軽微」の分類をしますが、これは製品品質への影響から判断すると良いでしょうし、必ず分類をしなければならないということでもありません。
 不適合の確認をした後、監査員は「不適合報告書」を作成します。このときは以下のことについて書きますが、なるべく簡潔に事実を書くようにします。

1)場所:不適合が見つかった個所のことです。
2)基準:要求事項のことです。(認定のための技術的基準ととらえても構いません)
3)事実:不適合の状態をかきます。
  ここは韻を踏む書き方と言われています。「00することとなっているが、00されていなかった」という表現を用います。
4)客観的証拠:記録の不備、インタビュー等から監査員が確認したことを書きます。
4.最終会議

 この会議では、監査員が被監査部門に監査結果を伝えます。
 基本的な実施方法は、以下のとおりです。

1)もう一度監査の範囲、目的、基準について確認します。
2)監査がサンプリングで行われた場合は、以下のことを伝えます。
 監査はサンプリングの方法で行ったので、この監査で見つかった不適合の他にも不適合が存在する可能性はあること。
3)監査結果を説明します。
 見つかった不適合の数と内容の説明をします。ただ、内部監査は不適合を見つけることではないので、良かった点があればそのことも伝えます。
4)被監査部門の人からの異議申し立てを受けます。
 不適合だったことに対しての質疑・応答を行います。
5)不適合報告書に、被監査部門の責任者からサインをしてもらいます。
6)是正処置の実施を約束してもらい、そのフォローアップ監査の実施予定を決めます。
7)被監査部門へは、監査に協力、してもらった御礼を述べます。
 これで内部監査は終了となります。不適合が見つかった場合は、必ず是正処置を行います。決められている内部監査を実施したからそれで終丁ではありません。
 矛盾はしますが、不適合があった場合、是正処置が行われ、その内容が確認されてから、本当の意味での内部監査が終了するのです。

5.監査報告書

 監査報告書は、主任監査員となった人が作成します。若しくは、その指示のもと他の監査員が作成しても構いません。
 報告書の内容は、簡潔にするとよいでしょう。
 作成するときは、次の項目は含めておきます。

1)監査の目的・項目
2)監査実施日
3)内部監査員名
4)被監査部門、被監査部門の兼任者名
5)監査の基準とした文書(認定の技術的基準)
6)監査の結果
  提出先は監査依頼者です。

<是正処置について>

 内部監査で不適合とされたことについて、被監査部門は是正処置を行わなければなりません。そのままにしておくことはできません。
 内部監査の目的は、品質管理活動をより良いものにすることにありますから、「不適合」とされたことをそのまま放置せず、「適合状態」になるように努力・工夫をしなければならないのです。
 是正処置は以下の手順で行われています。

1)即時処置:不適合の状態を適合の状態にすることです。
 注 これはすべての不適合にあてはまるとは限りません。何からの手立てで、すぐに適合の状態に戻せるものに限って行われます。
2)原因調査:なぜ不適合の状態になったのか、原因を突き止めます。
3)対策の要否検討:原因に基づいて、遡及処置か再発防止処置の要否を決めます。
4)遡及処置:不適合が発生したところまで遡り、そこから不適合と評価されるまでに製造された製品の評価(妥当性をみる)をします。
5)再発防止処置:再発防止の対策を立て実行します。
 再発防止策には2通りあります。再発を恒久的に防止するための「恒久策」と恒久策が実施可能となるまでの間行われる「暫定策」と呼ばれます。
 この中で注意をしなければならないのは、原因究明です。ここがしっかりとできなければ、その後に行われる対策が有効のものとならず、また次の内部監査で「不適合」となりかねません。
 さらに、不適合の原因で「担当者が忙しかった」ということも、残念ながら認められません。不適合の原因は「実施されるべきことが実施されなかった」ことです。なぜ実施できなかったのかの答えが、「担当者が忙しかった」だとすると、不適合の根本的な原因が「担当者の仕事量または能力」になってしまって、不適合の状態から離れてしまいますし、「忙しい」のは「現象」です。
 もう少し説明しますと、「忙しい」を原因にした場合、行われる是正処置は「担当者の仕事を減らす」となり、品質管理活動にこの先支障をきたすことになります。
 余談になりましたが、以上のことから考えると不適合の原因究明をしっかりとやることが必要です。対策がとれるところまで原因特定を行えるようにしましょう。
 被監査部門は、不適合とされたことについて是正処置を行いますが、不適合を指摘した監査員は、監査のあとに実施された是正処置について、確認をしなければなりません。この確認が終わらないと、内部監査のすべてが終わったとはいえません。被監査部門から、是正処置を行った旨の報告を受けたら、かならず確認をとります。
 確認を取る方法はいろいろありますが、この場合は「有効性」を評価します。難しいことですが、基本的には「不適合が再発しない」ことにポイントをおくと良いでしょう。
 最後に監査員は、実施された是正処置の確認をとったら、監査依頼者にその旨報告します。これで内部監査はすべて終了したことになります。

<システムの構築とは>

 ここまで内部監査について、簡単ですが説明をさせていただきました。まだまだ、書き足りないところもあるかと思います。さらに言葉がわからない等の疑問も生じたかと思います。そのときは、是非本会までご質問をお寄せください。そのなかから、また、新たにこのような形での説明をさせていただく方向で、努力いたします。
 さて、今現在システム管理が思うように進まない工場は、まず、新システム移行のための申請書の内容を、確認してください。どうでしょうか。無理な内容はありませんか。その内容のとおりに、実施できているのでしょうか。もう一度確認を取ってみてください。そして、自工場で実施が難しいと思ったら、迷わず変更してください。
 内部規程は、工場の数だけあります。このレベル以上という決まりもありません。ただ、自分たちが実施できる内容であることが、重要なのです。自分たちや実施できない規程なら、規程がないことと同じなのです。ですから、今の規程を見直してください。
 これは私の持論ですが、システムを構築して実施するにはある程度の準備が必要です。もちろんその準備期間が、長ければ良いというわけではありません。しかし、基礎はきちんと作らないといけません。
 童話の「三匹の子豚」を思い出してください。家を建てるために、長男は藁を選びました。ぱっ、ぱっと手際よく誰よりもすばやく家を作りました。でも、狼の一吹きで一瞬のうちに飛ばされてしまいます。次男は、木材で家を建てます。長男のものよりは見栄えもよく頑丈そうですが、きちんと要所を留めていなかったので、この家も狼の一吹きで壊されてしまいます。三男は、上の兄二人にかなり遅れをとりましたが、レンガの家を作りました。一つ、一つ丁寧に積みあげたレンガの家は、狼の一吹きで壊れることも無く無事でした。
 何を言いたいのかといいますと、システム管理の準備は、一つ、一つ積み重ねていかなければならないのです。
 さらに、誰かに頼んでつくりあげてもらったものは、決して自分たちのものではないのです。それを理解してください。そこからすべては始まるのです。

執筆者:(財)財団法人日本炭酸飲料検査協会 主任検査員・JRCA ISO9001 審査員補  内木 美絵子
出典:平成17年2月発行炭酸検協会報掲載


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