■第八話「炭酸飲料瓶詰の破瓶問題と消費生活用製品安全法」 |
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◎消費生活用製品安全法の制定
1971年(昭和46年)前後、生活する身の回りにおける製品の安全性を確保するという国民的要請が高まっていた。その一方で、コーラ炭酸飲料の500ml瓶詰製品による破裂事故が多発し、その被害は、同じ年の警察庁調査で発生件数310件、被害状況213件、うち眼球障害2件、縫合手術43件となっていた。
また、他方では、圧力鍋の爆発事故、登山用ナイロンザイルが切断し転落した死亡事故、ベビーカーや歩行器・玩具など乳幼児用製品の欠陥事故が重大なものとして指摘され、このほか、食品や家電製品・ガス器具等の製品の欠陥による事故が続出した。
このような情勢を背景に、すでに整備されていた特定分野を対象とした規制法(電気用品取締法、ガス事業法、食品衛生法等)によって特定の分野の製品を対象とした取締法令あるいは各種の行政措置により製品の安全性確保の向上を図ってきた。
しかしながら、所得水準の向上、技術革新の進展に伴って、複雑、かつ、高性能な製品が次々と開発されているので、消費者としてはこのように多様な製品の安全性について自ら判断することが不可能な場合が多く、製品の欠陥や苦情も相当数にのぼっていた。
したがって現行の規制法では対応できず危険な製品が放置されることを防ぐため、製品安全のための一般法として1973年(昭和48年)の第71回国会において成立した「消費生活用製品安全法」(以下「消安法」という)が1974年(昭和49年)3月5日から全面的に施行された。
◎400ml以上の炭酸飲料瓶詰(ガス内圧力2.5kg/c㎡以上)は第1種特定製品に指定
1971年(昭和46年)に発生したコーラ炭酸飲料の破裂事故は主として500ml瓶に集中していた。製品の欠陥によって一般消費者の生命、身体に危害を及ぼすおそれが多い製品は特定製品として製造・販売等の規制が行われた。
その「第1種特定製品」とは、特定製品のうち、その製造又は輸入の事業を行う者が一般消費者の生命又は身体に対する危害の発生を防止することが困難であると認められる製品で政令で定めるものをいう。
炭酸飲料の政令指定は1974年(昭和49年)3月となり「炭酸飲料びん詰(内容積が0.4L以上のガラスびんに温度20℃におけるゲージ圧力2.5kg/c㎡以上で炭酸飲料を充てんしたものに限る)」となったものである。
○検定又は登録、型式承認
国で定めた炭酸飲料びん詰の安全基準に適合している製品には、王冠、キャップ及びラベル等に下記の表示をしていた。万一Sマーク製品の欠陥により人がけがなどした場合に備えて、製造者は法律に基づいて、被害者1人当たり1,000万円以上、年間3,000万円以上を最低限度額とする損害賠償責任保険契約を損害保険会社と締結していることが必要とされていた。
○専業著、型式及び対象製品数量等
1975年(昭和50年〉度では、コカ・コーラグループ17社58型式、ペプシコーラグループ13社29型式、中小1社1型式、合計は31社61工場88型式(普通瓶47、保護被膜瓶18、被膜瓶23)、対象製品数量はコカ・コーラ、ペプシコーラ、スプライト、ミリンダレモンライム、コアップガラナの500ml、1,000mlで6億8159万本であった。
1975年(昭和50年)の炭酸飲料の生産量は2,799千klでうち缶製品を除く2,145klが瓶詰製品でありこのうち消安法の対象製品が26,6%の570千klを占めていた。
事故が発生した当時コーラ炭酸飲料の500ml瓶詰に集中していたことから瓶の安全性の問題が指摘されたことからガラス瓶についても同様に消安法の対象となった。炭酸飲科の製造業者は製品の事故防止の面から瓶型の改良、瓶にウレタン、ゴム系等による保護被膜又は被膜を施し一般消費者に製品欠陥による生命、身体に危害を与えることのないよう万全の対策を講じるとともに製造工程における検瓶体制及び品質管理体制の整備拡充が一層図られた。
◎第2種特定製品の自己認証に移行
1975年(昭和50年)の指定から約10年が経過し、この間の製造技術の進歩、瓶の改良、品質管理能力の向上等により事故件数も落ち着いた動きをみせていたことから、炭酸飲料瓶詰及び炭酸飲料用ガラス瓶は、1986年(昭和61年)5月開催の製品安全及び家庭用品品質表示審議会では「最近における製品欠陥による事故状況及び安全性を確保するための製造技術・検査技術の水準・普及度を考慮し、第2種特定製品とすることが適当である《と答申された。これに基づき第2種特定製品としての「炭酸飲料瓶詰の安全基準等を定める省令《(昭和61年農林水産省令第28号)が制定され、同年6月20日から、従来の政府認証による型式承認から、事業者が届出制で安全性を確認して製造、販売する自己認証制に移行された。
○事業者、型式及び対象製品数量等
1986年(昭和61年)度では、コカコーラグループ17社70型式、ペプシコーラグループ8社17型式、ビール会社3社6型式、セブンアップ1社1型式、中小15社18型式、ペリエ1社1型式、合計は45社、71工場、113型式。対象製品数量は、400m1 450千本、500ml 143,618千本、700m1 300千本、750m1 3,896千本、1,000ml 275,704千本、1,500ml 3,026千本、合計は4億2,699万本であった。
対象製品は、コカ・コーラ、スプライト、フレスカ、コカ・コーラライト、リアルゴールド、ペプシコーラ、ミリンダレモンライム、コアップガラナ、ドクターペッパー、サントリー(レモン、ポップ、ソーダ)、セブンアップ、キリンレモン、ペリエ(輸入品)、レモンサワー等であった。
1986年(昭和61年)の炭酸飲料の生産量は2,676千klでうち缶・PETボトル製品を除く1,281千klが瓶詰製品でありこのうち消安法の対象製品が27.7%の355千klを占めていた。
◎消費法が1996年(平成8年)1月1日より指定解除
規制緩和の政府方針に基づき、1995年(平成7年)2月に開かれた製品安全及び家庭用品品質表示審議会において、特定製品の見直しが審議され、「炭酸飲料瓶詰は、第2種特定製品への指定以降、引き続き製品欠陥による事故が皆無であること、安全性を確保するための製造技術及び検査技術に著しい向上がみられること、試買テストでの不適合がないこと等から特定製品の指定を解除する」との答申が行われた。
指定解除しても事業者の自己責任により従来と同レベルの安全性を確保し得るとして、同年6月26日消安法施行令が改正され、1996年(平成8年)1月1日施行により指定解除が決まった。消安法の特定製品に指定されてから廃止されるまでに約21年の長い期間を経過したが、ここに至るまでに事業者は炭酸飲料瓶の強化、瓶型の改良、製造技術の向上、検査体制の整備拡充等を積極的に行い、また、消費者に取扱い上のPRをする等の努力が実った結果である。
○事業者、型式及び対象製品数量等
1995年(平成7年)度では、コカ・コーラグループ17社38型式、ペプシコーラグループ9社17型式、サントリー社1型式、中小7社9型式、ペリエ1社2型式、合計は35社、30工場、70型式であった。
1995年(平成7年)の炭酸飲料は2,940千klのうち缶・PETボトル製品等を除く516,681klが瓶詰製品でありこのうち消安法の対象製品が4.8%の24,672klと激減するまでになった。2001年(平成13年)の炭酸飲料の生産数量は2,649千klと発表されているが容器別のシェアをみるとアルミ缶26.1%、スティール缶10.3%、びん12.3%、PETボトル51.3%となっている。
消安法に指定された当時は瓶詰製品のシェアは73%程度で缶製品が27%であった。1982年(昭和57年)食品衛生法に基づく清涼飲料水の規格基準の改正によりPETボトルの使用許可以降は400ml~2L等の中・大型のガラス瓶詰製品はPETボトルに移行又は500ml缶に切り替えられて炭酸飲料中のシェアは12.3%に低下しており、リターナブル瓶詰製品だけでは3~4%程度とみられる。500ml以上で生産・販売されているのは炭酸水、クラブソーダ、レモンサワー等のミキサードリンクに使用されるのが主力と思われる。
出典:清飲通信(平成14年5月1日号に掲載)
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